8時間睡眠のウソ。

『8時間睡眠のウソ。』読了。

8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識

8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識


内田麻理香さんもお勧めしてて、読んでみました。

確かに良かった。睡眠学の最近の知見が面白いというか、一般的に常識になってることがもはや間違えが多くて、重大な誤解を社会に生んでいることも分かり、知識がアップデート出来る。

無理と分かりながらもハウツーに挑戦するのにも、ある種の誠実さを感じた。そう、著者らになんか愛がある。
無理というのは、例えば、現在でも各個人がどれくらいの睡眠時間が必要か、ということはなかなか分からない、などの問題があるから、素朴なニーズに応え辛い、ということ。

それでも、著者の三島先生のラボでは、個々人の体内時計を時計遺伝子を指標に計る技術も研究中で、近い将来が非常に楽しみ。


時計遺伝子は、ちょー簡単に話すと、自分の遺伝子産物が増えると、産物が増えることをその産物自身が抑えにかかる遺伝子で(いくつか有名なのがあります)それ故、増えては減り増えては減り、というサイクルを刻む遺伝子達です。分子生物学的に非常に面白いです。司令塔は脳の視床下部・視交叉上核なんですが、時計遺伝子は各臓器の細胞にもあって、それぞれの部位の時計遺伝子が「時刻」を刻んでいるんだけど、視交叉上核がマスター・クロックになって、体全体としての時間を同期させているような感じです。

ちょっと脱線したけど、必要な睡眠時間は個人でも年齢でも違いがあること、不眠症状のタイプにもいろいろあることが詳しく書かれていて、8時間睡眠にこだわらなくていいんだよ、という感じが一つの目玉。読みながら自分の本当のニーズに自分が気付いてあげられるような構成になってます。


未解明な部分も多いとは言え、ちゃんとしたエビデンスに基づいてるし、図も出てくるし、紹介されてるデータの規模(被験者数)もデカイいので、ちゃんとした科学本。だけど読みやすくて素晴らしいと思いました。


現代科学で解明出来てない部分が多いと、普通なら物足りなく感じたり、もしくは、煙に巻かれたように納得させるような本もあるとおもうけれど、そこは、作家の腕や直感、「一般人的」感想や実体験でちゃんと補っていたり、なにより、未解明のことがあっても、診察をしなければいけないお医者さんが共同著者なだけあって、ふだん臨床で一人一人の患者さんに向き合ってる姿勢が、そのまま読者にも伝わるので、納得しながら読めるというか、煙に巻かれてない感じがして、好感が持てました。実際、治療効果が高い方法もいっぱい分かっているようです。

三島先生の語り口、とても安心感があるいいお医者さんな感じ。川端さんの書き方・構成が、導入から本論に至る過程でいい感じで復習出来る様になってて、理解が深まりやすい。

結局、自分が昼間辛いかどうかが最大の問題で、脳波が奇麗でも本人は睡眠に満足していないなど、主観にゆだねざるを得ない反面、自分と相談しながら解決していく問題なんだなーと。

あと、夜の睡眠のためには昼の過ごし方が大事とか、寝付けないなら眠くなるまで寝なくていいんだよ、とか、なんか温かい感じのことが、エビデンスとともに示されてて、読み終わってなんだか安心する本でした。


あと、本でも紹介されてるこちらのサイトで、色々と簡易的に診断もしてくれます。
http://www.sleepmed.jp/q/meq/

僕の夜型人間偏差値は、めちゃくちゃ高かったですw 案の定。